矢掛
重要伝統物群保存地区として本陣・脇本陣が残る西国街道有数の宿場
矢掛町は倉敷市の北西に位置する町です。真備町の西側で、小田川の上流に位置します。周囲は山々に囲まれた盆地で、豊かな自然も魅力です。井原鉄道が町を東西に通り、矢掛駅など3駅があります。
江戸時代、矢掛町を東西に西国街道(山陽道)が通過していました。矢掛町の中心部の矢掛地区は、西国街道の宿場・矢掛宿として栄えた町です。かつて矢掛宿だったエリアは現代になると、矢掛商店街としてにぎわうようになりました。いっぽうで町並保存地区として保存活動がおこなわれ、古い建物が今も残っています。令和2年(2020年)には、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されました。
矢掛宿保存地区周辺では、さまざまな行事が盛んです。2月には「矢掛本陣マラソン大会」、3月には「宿場町やかげ 流し雛」、8月に「やかげ 夏の行灯まつり」、11月になると「宿場まつり 大名行列」が開催されます。なかでも大名行列は、矢掛を代表する大きな行事です。
また矢掛町の東部から真備町にかけてのエリアは、古代に豪族・下道(しもつみち)氏が拠点としていたエリアです。下道氏は奈良時代に活躍した学者・政治家の吉備真備(きびのまきび)を輩出した一族になります。そのため矢掛町東部の東三成地区などには、下道氏や吉備真備に関連する史跡もあるのです。
矢掛宿の南側を通る国道486号線には、道の駅 山陽道やかげ宿があります。隣接する矢掛の町で買い物や飲食を楽しんでもらうため、施設内には物販・飲食コーナーをあえて設けていません。矢掛宿全体を道の駅と捉えた、新しい形の道の駅です。外観はデザイナーの水戸岡鋭治が監修しています。
矢掛宿 重要伝統的建造物群保存地区
矢掛町中心部にある町並保存地区で、江戸時代に山陽道の宿場「矢掛宿」として栄えた町並です。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
今でも当時の面影を残す街並みが残り、本陣と脇本陣の両方が昔の形のまま現存する唯一の宿場です。しかも本陣・脇本陣とも国の重要文化財に指定されています。長さ約1km、面積約11.5haにわたって歴史的な建物が続いているのが特徴です。
矢掛本陣(石井家住宅)
江戸時代に石井家は代々、矢掛宿の本陣を務めてきました。矢掛本陣は江戸時代の参勤交代のときに大名が宿泊したり、公家や幕府役人などが宿泊した宿です。
矢掛本陣は約1,000 坪の敷地に、上段の間を備えた御座敷、御成門などを設置。さらに住居の場や石井家の家業であった酒造業の場、母屋、蔵など、合わせて十数棟も建っています。昔の姿をよくとどめており、国の重要文化財に指定されました。
矢掛本陣は、中に入って見学ができます(有料)。
矢掛脇本陣(高草家住宅)
高草家は代々、矢掛宿の脇本陣を務めていました。脇本陣は本陣を補佐する宿で、大名の家臣や幕府の役人などが泊まっていたところです。大名家臣や幕府役人の利用がないときは、一般人も宿泊できました。
高草家は金融業で財を成し、庄屋も務めていた家です。敷地は約600坪あり、矢掛宿では本陣に次ぐ規模の屋敷。母屋や蔵座敷など9棟が昔の状態をよく残しています。そのため国の重要文化財に指定されました。
本陣同様に脇本陣も中を見学できます(有料)。脇本陣と本陣は約400mの距離ですので、合わせて見学するのもおすすめです。
やかげ郷土美術館
やかげ郷土美術館は、矢掛宿の町並の北側にあります。矢掛の町並みに合った町木の赤松を使った伝統工法による建物が特徴です。また高さ16mの水見やぐらは、やかげ郷土美術館のシンボル的な存在。やぐらの上に登れば、町並みを一望できます。
館内には矢掛出身の書家・田中塊堂や洋画家・佐藤一章の作品などを展示。矢掛にゆかりがある作品のほか、歴史資料も展示しています。
吉備真備公園・吉備大臣宮
矢掛町東部・真備町に近いところに、吉備真備公園があります。吉備真備を輩出した下道氏の居館の跡とされ、歴史公園として整備されました。
居館跡には「囲碁発祥の地」記念碑が建てられ、「古代の丘」が整備されています。吉備真備公園は、日本公園緑地協会により「日本の歴史公園100 選」に選定されました。
また吉備真備を祀る吉備大臣宮もあり、学問の神様として多くの参拝客が訪れています。
圀勝寺
圀勝寺(こくしょうじ)は、奈良時代の天平勝宝8年(756年)に吉備真備によって開かれたと伝えられている寺です。また寺の東から、吉備真備の父・下道圀勝と叔父の圀依が、母(吉備真備の祖母)の遺骨を埋めた骨壺が発掘されました。
圀勝寺の境内には、樹高8m、樹齢350年を超える大きな椿があります。矢掛町指定の天然記念物です。毎年春には見事な深紅の花を咲かせ、落ちた花が真っ赤な絨毯のようになります。